愛と不如意

どこまでもモノローグ

応答せよ

私に性加害をした相手は、地方で学習塾を経営している。

かつては教員だった彼の「セカンドライフ」があまりに狂気じみていて、声を失う。

三日で噂が広まるあの地域で、悠々とセカンドライフに移行できる理由を考える。

彼と「家族」を続ける者たちの心の内も。

もちろん彼の「家族」だって、被害者だろう。

でも。それでも。彼らはその「セカンドライフ」をどんな気持ちで後押ししたんだろう。 

 

私には分からない。

被害者がいつまでも被害者として生きねばならないのに、加害者が「新しい役割」で人生を歩めるこの世の安楽さが。

この世はいつだって、加害者に優しい。

 

そして、強く強く案じている。

彼のもとで学ぶ子どもたちがまだ居るということ。

新たな被害者が居るのではないかという疑念。

何らかの「成果」と「生産性」があれば、性と生の尊厳を奪っても、不問に付されること。

 

きっと彼は、加害を加害とも思っていないだろう。

そんな相手に、どんなかたちで応答を求めれば私は気が済むのか。

 

被害者の「その後」はあまりに長すぎる。

私たち被害者は、生きるという罰を受け続ける。

あのときから、生きること自体が地獄になってしまった私たちの時間は戻ってこない。

本当に罰を受けるべきは私たちではないのに。